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あれから高良田は俺や江西を見かけるとバカデカボイスで話しかけてきた。
まるで大浴場の出来事などなかったような振舞いに、俺もあえて触れはしない。というか高良田と会話をしたくないだけだが。
会うたびに問題をお越す高良田に尊敬すらしてしまう。いい方向でも悪い方向でも中心にいたいらしくこの数日間で学園内に高良田の名前を知らない者はいなくなった。
「陽介!お、他の皆も一緒なんだな!!」
ちなみに数日にしてクラスの皆に変装がバレた高良田は素の姿で学校に通っている。
仕事を終え生徒会室から出た俺たちに、可愛らしい見た目を露にした高良田はぱたぱたと駆け寄ってきた。
「高良田、廊下をはーー」
「俺の前で無理に喋る事ないって言っただろ、優!喋らなくても俺はお前の言いたい事分かってるから!!」
相変わらず人の話を聞かないな。
高良田の中でどう曲解されたのか、上岡は話す事が苦手で友達が少ない可哀想な男らしい。
人望厚い上岡は同級生や後輩からの相談も多く、特別枠を獲得したのは顔だけでなくその人柄からだ。
そんな男を捕まえて可哀想とはよくいったものだ。
「よーちゃんよーちゃん、僕はやく帰りたい」
「また宏太はそうやって男に媚売って!!もっと自分大事にしなきゃいけないんだぞ!!」
高良田を見るなり安江は俺の腕を引き帰りを促してきた。これ程に嫌いなのだろう。
それもそのはず。高良田は安江を尻軽女のように接する。
確かに媚びを売るような話し方で下品な事も言う。だがそれと実際の性生活がイコールではなく、安江のそういった噂は俺には一つも入ってこない。
そんな話は江西に言ってやれ、と心の中で呟きつつ安江を自身の背中に隠した。
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