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「八代先生、二度目はさすがに訴えますよ」
身動ぎし八代先生の手から遠ざかり言えば「警察にか?」とクツクツ笑う声が帰ってきた。
「いえ、直仁さんに訴えます」
「そりゃおまんま食えなくなっちまうな」
案外すんなりと八代先生は退いた。
降参といいたげに両手をあげ一歩下がる八代先生を横目に俺は再び掃除を始める。
今度は八代先生も手伝う気になったのか、DVDを右から左に移動させた。
それは片付けとは言わないからな、31歳児。
八代先生の部屋がこうなった原因を垣間見た気がし、眉間に自然と皺を寄せた。
「そういや直仁とお前って知り合いなのか?」
「はい、直仁さんが公立の教師されてた頃のお隣同士ですが」
「……え、じゃあもしかしてアイツの片想いの相手ってお前か」
「それはうちの母親です………あの、八代先生は直仁さんとお知り合いなんですか?」
「おー、大学時代のな。にしても直仁の片想いの相手がお前の母親とはなー」
「八代先生、直仁さんに変なちゃちゃ入れないでくださいよ。上手くいくものも八代先生が口出したら上手くいかなくなりそうなので」
「人をクラッシャー扱いするな……でも直仁が惚れた相手は会ってみたいわな」
余計な事を教えてしまっただろうか。
俺は休息を取っているであろう直仁に心の中で謝罪をし、八代先生もゴミ袋に詰めてやろうかと目の前のいじめっこの顔をした男を睨んだ。
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