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その後ある程度片付け終えた俺はすっかり冷めたコーヒーに口をつけ一息ついた。
一体俺は休日になにやってんだか。
「で、飯は?」
この男ほんとうに結婚できないな。
あたかも当然と言わんばかりにふんぞり返り人を顎で使う八代先生。怒りを通り越して哀れみさえ感じる。
「三日分くらいありますので冷蔵庫で保管してください。今から食べるんでしたら温めますが」
タッパーをテーブルに並べながら問えば「中身なに?」と質問で返された。
右から人参のきんぴら、鰹のたたき、ナスの揚げ浸し、鶏肉の西京焼き、ふろふき大根、そぼろ煮、いなり寿司と説明していけば八代先生の目が分かりやすくキラキラと光る。
並べてみて思ったがすごい量だな。元々母親は人に食べてもらう事が好きだが、俺が誰かの為に作ってほしいと言ったのは初めてだったので気合いが入ったのだろう。
「鰹のたたきとふろふき今くいたいわ」
チョイスからしてこれは今から呑む気満々だな。
タッパーを全て台所へと移動させ、八代先生に伺い皿と箸を棚から出す。
「冷蔵庫にしまいたいのですが、開けてもいいですか?」と椅子に腰掛け待てをする八代先生に聞けば、「ついでにビール」と予想通りの返事を返された。
「日本酒あるなら熱燗つけましょうか?」
「お、まじで?サービスいいな」
「どうせなら美味しく食べていただきたいので」
「コンロの棚下にあるから頼むわ……お前も呑んでくか?」
「未成年に飲酒すすめる教師がどこにいるんですか」
「少なくともここにいる」
悪びれもせず頬杖をつきニヤリと笑う八代先生に、ここにきて何度目かも覚えていないため息を吐いた。
「二十歳になったら是非ご一緒させてください」
皿に盛り付けた鰹のたたきをコトリとテーブルに置き言えば、八代先生は楽しみだと目を細めた。
この人と二十歳を越えても付き合いがあると想像すると何だか嬉しく俺も釣られたように笑った。
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