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カァと羞恥と怒りで顔に血が昇った。
少しでも煩くなった俺の心臓に渇を入れ、八代先生のみぞおちに肘鉄をお見舞いする。
だが酔いから痛みが麻痺しているようで「痛い」とそうは聞こえない声がかえってくる。
「ここはホストクラブではないですから……女性と勘違いして抱きつかないでください!!」
なおも腕の力を緩めない八代先生にきつく言うものの退く気配はなく、思わず大きな声をあげてしまう。
酔っぱらうのは勝手だが、昔店に来ていた女性たちと勘違いされては溜まったものではない。
何が「帰るな」だ。イケメンは何を言っても様になることで。
怒りのあまり思考回路がおかしくなり、自身が何に怒っているのかも分からなくなってきた。
俺が一人悶々としていれば、酔っぱらいの八代先生は俺をくるりと自分の方へと向かせ壁に手をついた。
謂わゆる壁ドンというやつだ。
「なーに怒ってんだよ……俺はお前だから抱き付いたんだろ、わかってる癖に」
これが元ホストの実力か。
言われてる内容はどう考えても変だというのに、俺の脳はドロドロに溶けて自身がホストクラブに遊びにきた女だと錯覚さえ起こしそうだ。
もしかしたら日本酒の匂いで少し酔っているのかもしれない。
「うるさい、酔っぱらいが」
「ならお前も酔っちまえよ」
「は?……ッん」
どこに隠し持っていたのか、八代先生はビールのプルタブを開けると自分の口にそれを含みそのまま唇をおしつけてきた。
同時に流れ込む苦い液体を舌で戻そうと試みるも、俺の舌は易々と八代先生に捕まり絡めとられる。
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