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私が見る白いものは、常に汚れていた。 例えば昨日できたばかりの標識。白くて、つるつるしていて。でもぐるりと見て回ったとき、早速真新しい落書きがしてあるのを見つけた。よく見れば上の方に製造番号が記されたシールが貼ってあって、「あぁ、これは違う」と思った。 例えば交差点。今日も小学3年生くらいの男児が、泥だらけの靴で白だけを踏む。まるで恨みなんてなさそうな顔で。塗りたての白だって、毎日人が通れば黒くくすんでいく。足跡の形をしていた茶色い模様は、雨に流されたりまたその上に跡をつけられたりして形を崩していく。そうしてまた汚れる。 勿論最初から汚れているわけではない。白くてきれいなものは壊れやすくて、汚れやすいのだ。だからどんなに最初はきれいであっても後から廃れていく。私はそんなものを、本当に白いと呼べなかった。呼びたくなかった。
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