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「ねえ、森崎くーん」
放課後、だらだらと帰り支度をしていると、教室の入り口から俺を呼ぶ声が聞こえた。頭だけをひょこりとのぞかせ、薄茶色のウェーブのかかった長い髪を揺らした雪村がじっと俺を見つめていた。
「なんだよ……」
名前の如く雪のように白い肌に輝く彼女のまん丸の目をちらりとだけ見て、俺は不愛想に返事をした。
雪村は俺の席へと近づいてくると机に両手をつき、さらに俺の顔を覗き込むように言った。
「今日これからなんか用事ある?」
「ねえよ……」
「だったらさあ、ちょっとクラス委員の仕事手伝ってってくれない?」
小首をかしげた雪村の首筋に夕日があたり、俺は言葉に詰まってしまった。
雪村がなんでこの俺なんかに声をかけてくるのか全く見当もつかなかったが、仕事を頼まれているのは確かだ。
「なんだよ、そのクラス委員の仕事ってさあ」
俺はさも気だるそうな声を出し、めんどくさいとアピールしたが、実のところ胸の中ではピンポン玉が弾むように小さく鼓動を打ち続けていた。
「別に俺じゃなくたっていいじゃん。誰か他のやつ……」
そう言いながら周りをみると、すでにクラスメイトたちは姿を消し、教室内には俺と雪村だけになっていた。
――まじかよ……
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