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「ね。もう森崎くんしかいないの。お願い」
胸の前で両手を合わせ、上目遣いに俺を見つめる彼女の瞳がなんとなく揺れている気がして、ピンポン玉は野球のボールか、もしかしたらバスケットボールほどにもなっていたかもしれない。
「ちょっ……いや、それより俺さ、今日これから英語の宿題やんなきゃなんないからさ」
俺は自分の胸の中の弾むバスケットボールをなんとかおとなしくさせようと、この二人きりの教室から逃げるための言い訳をした。
「ああ、だったら仕事が済んだら一緒にやってあげる。だからちょっとだけ残ってよ」
雪村はそう言うと、教室から逃げ出そうとする俺の腕をがっしりとつかんだ。
――手! おいっ! 手とか……
バスケットボールが大人しくなるどころか、それはまるで大太鼓を打ち鳴らすかのようにさらに激しくなり、目の前がチカチカとし出したと思ったその時、誰かが教室に入ってきて声をかけてきた。
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