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 途端に、男性から笑顔が消えた。すっと、つめたい、無表情でモニターを見上げてきた。 「あけろ」  モニターに映る顔は、先ほどまでの整った顔とは全く異なり、別人のようだった。その薄い唇で、ゆっくりと、男性は深い息と共に呟いた。 「きょう、だから、はぶらしをにほん、かったんだろ」  ひ。  小さな悲鳴をあげ、モニターを消した。  その瞬間。  どんどん!  がたがたがたがたがたがたがたがた。  激しいノックと、ドアノブを乱暴にひねる音が聞こえてきた。思わず玄関にかけより、鍵がかかっているのを確認する。念のため、ドアチェーンをかけた時だった。  かちゃり。  驚くべきことに、鍵が開いた。  ただただ目を丸め、ドアノブが回されるのを見ていた。  がたん!  ドアチェーンの隙間から、男性の顔が覗くのを見た。  腰が抜け、後ずさりをした。  男性はつまらなそうに、チェーンをちらりと見て舌打ちをした。私を冷たく見下ろしながら、言う。 「おまえ、変な噂たってるよ。色んな男を中に入れてるって。声がたくさんするって。同じアパートの奴皆噂してるよ」  がちゃん!  乱暴に、ドアは閉められた。  しばらく呆然としていたが、先ほどの男性の言葉が思い浮かぶ。  変な噂。  色んな男を中に入れてる。 「なによ、それ」     
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