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 震える唇で、声に出したら、その瞬間深く息を吐いた。恐怖で、息がうまく出来ていなかったようだ。深呼吸する。  色んな男を。  声がたくさん。 「なんなのよ、わたしは、ひとりぐらしよ」  立ち上がると、台所へ向かう。  そこには、男性が血を流して横たわっていた。  胸に包丁が刺さっている。血走ったその瞳はわたしを見つめている。 「ひとりぐらしよ」  リビングに行けば、首を吊った男がいる。寝室を覗けば、青い顔をした男が布団の中にいる。風呂場には手首を切った男がいる。  歯を磨こうと、洗面台に行く。赤と青の歯ブラシが見える。 「歯ブラシ、二本じゃ足りなかったかな」  背後で、たくさんの男の人の、笑い声がした。 了  
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