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小さな頃ママが言っていた
「虹の向こう側には7つの幸せが有るんだよ」って
国同士の戦争もなく
肌の色に泣く事もなく
人間同士の争い事もなく
子供同士の苛めもなく
人々は涙する事も無い
大地は肥え
花が咲き乱れ
額に汗をして働けば
空腹など無くて
すれ違う者同士
笑みを交わせば
小鳥達は唄を歌う
「そんなの有る筈無い」
子供ながらに母の幼稚さに笑ってた
そんな私を見た母は
優しい微笑みを浮かべて
「今は解らないよね・・・貴女が本当に人を愛した時、きっと行けるわよ」
湯気が立ち昇る浴槽の中で紅い糸が幾筋も幾筋もユラユラと広がっていく。
ボンヤリと見つめる私の目にその紅い糸が白い乳房に絡み付いてくる。
細かった糸は次第に赤みを帯びて太くなり私を眠りに誘う。
何故か?笑いが込み上げてくる。浴槽一杯に広がる幾筋もの糸が重なると、それは深紅の薔薇の花弁に成り、私の白い両足に両手に、そして白い乳房に押し寄せてくる。
(何て気持ちが良いのだろう)
溜め息が出る位に気持ちが良いな。
眠気でボンヤリする頭にビデオを巻き戻しているように浮かんで来る。
(私はね、本気だったんだよ。貴方は多分、ううん、多分じゃない、遊びだったんだね。笑っても良いよ(バカな女)と笑っても良いよ)
ただ、愛する人が、愛してくれる人が欲しかっただけだったの。
(生きてきて、愛した人が3人居た)
だから貴方は楽しかったの?
面白がったの?
貴方の優しい言葉に一喜一憂する私を見ていて心の中で笑っていたの?
貴方のあの笑顔は貴方の愛を疑う事無くて、信じる私を見ていて笑ってたの?
ハッ!湯気が浴槽の天井に当たり冷たい雫石(しずく)に成って眠りに付きそうな私の右肩に落ちると、その冷たさにフッと目覚める。
《初めまして、誰か話しませんか?》
馬鹿みたいなコメント来る訳無いじゃない(笑)
諦め掛けていた着信のメロディー。
「えっ、嘘っ!」
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