0人が本棚に入れています
本棚に追加
拝啓、洗観音寺様。
貴女の手紙が届くまでの間にこちらのクチナシは枯れました。入れ替わる様に朝顔が咲いています。
書斎の窓を開けて、煙草の煙をふかしながら、縁側で庭の手入れをする細君の着物の帯が揺れる様子を見ていると夏が来たな、と思っています。
結婚おめでとうございます。女学校時代の時は貴女が一番最後に輿入れすると思っていましたが、まさか貴女が一番早く輿入れするとは思いませんでしたよ。運命ってのはよく分からない物ですね。
目が見えないを可愛いらしい、なんて言うとは、思いませんでしたよ、嫌本心を言うと言うだろうなとは思っていましたが、女学校時代ならば反省文を書かしていたところです。
二月前までは、川のゲンゴロウがカエルを倒していて下克上だな、なんて幼稚な事を言って私を和まして悩ました貴女が、打って変わりとても女性らしい感性を持っていて驚きました。
私の教育は間違ってなかったのですね。
覚えていますか、国語の時間の時、貴女が教科書一九六項の俳句を読んだ後の感想を述べる時の事を、痩せ蛙負けるな一茶ここにあり、でしたね。
その感想を貴女様が言った時に、生徒の皆さんは笑っていましたね、私も笑っていましたが、中々面黒い物だと思いましたよ、面黒いの意味は覚えているでしょうね?東海道中膝栗毛の時間に教えましたよね、面白いの白の反対の黒だが意味は対義語は無くて同じ意味と。
話が逸れましたね、貴女は戦っている蛙ではなくて、逢引中の蛙なんて言っていましたっけ。
最初のコメントを投稿しよう!