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「あんた達…人のコタツ楽しんでるくらいなら協力しなさいよ!ただで我が家に居候してんじゃないわよ、ちったあ働け!働きやがれ!!」
あまりにフリーダムな同居人三人に、つい私は吠えていた。えー、私コタツ入れてないんですけどーぶら下がってるしー、と首吊り風俗嬢が言っているが無視である、無視。
そう、このボロアパートの一室、何が凄いって家賃が安い。この東京の、駅から三分というとんでもない条件にも関わらず家賃が破格の値段。なんと一ヶ月五千円である。――理由は簡単。この部屋が超事故物件だからだ。なんと過去に三人も死んでいる。作曲に煮え詰まって風呂場で自殺したバンドマンに、彼氏にフラレてやけっぱちになって首を吊った風俗嬢、そして仕事に出かけようとして見事にすっ転び、後頭部を打ち付けて居間でおなくなりになった派遣社員のオジサンの三人である。つまり、今私の目の前にいる三人だ。
この三人ときたら、私にそこそこ霊感があるのをいいことに毎日ちょっかい出してきまくりなのである。一人暮らしなのに、彼らに怒鳴らなかった日がない。風呂に入ればバンドマンに覗かれるし(それも自分が流した血のあとがどうのーとか余計な解説を入れてくるし)、風俗嬢は寝る時いつもぶらぶらと布団の上にぶらさがってきてジャマ極まりないし、派遣社員のオジサンは死んだ今になっても職場の愚痴を言ってきては酒が飲みたいとゴネてくる。本当に騒がしくてならない。きちんと相手してやらないと、気紛れにポルターガイストを起こしてくるから余計厄介なのだ。
『タダで居候たって、所詮家賃は五千円じゃないですか。しかもそんなに安いの俺らのおかげですよね。むしろ感謝してくれてもいいのでは?』
「そうだねこんなオバケがトリプルで出没部屋なんか誰も借りたくねーわな!大屋さんに土下座して頼まれた時点で嫌な予感してたのに借りた私もどうかと思うけどな!!…でも五千円は取られてんのよ、その分くらい仕事しなさいよ仕事!」
『その仕事がなんで妄コンのアイデア出しなんですかあ?暇なんですかあ?』
「暇じゃないわよ、でも私だって賞金は欲しいのよ悪い!?三万あれば新しい腕時計の一つも買えるのよ!!」
『三万って大賞狙ってるのかー…無理だろー十回も応募してピックアップルーキーにもスルーされてきたのにー…』
「うるさいわね、何でそんなことばっか覚えてんのよこのオッサンは!!」
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