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『…ひょっとしてマナミ、私達に感謝してる?しちゃってるー?』
ほんの少し、感動に近い何かを抱きかけた瞬間――それを思い切り、風俗嬢がブチ壊しにしてくれた。
『じゃあ感謝の証に、新しいマニキュア買ってお供えしてくださいー!あ、ネイソン社のダークレッドのラメ入ってるやつがいいですぅ~!』
『あ、それなら俺新しいギター欲しいです!あと譜面台!』
『ええ、いいなあみんな。じゃあ俺は…』
「ちょっとちょっとちょっとそこおおお!?」
これ幸いとオネダリを始める三人に思わずツッコミを入れる私。待て、よくわからんが待て。お前達OLの安月給ちゃんと考えろ。というかそもそも幽霊なんだからマニキュアもギターも新しいもの買ったところで使えないだろうが!――あ、いや、というか使えたら正直怖いのですが!!
「感謝なんかしてないんだから!あんたらなんかうっさいだけで…全然ぬくもりとか、そんなの感じてたりしないんだからねっ!?」
わいのわいのと騒ぐ連中に、私は思わず立ち上がり食卓の塩を構えて言う。ぎゃー!暴力うう!とコタツを飛び出して逃げ回るor激しくぶらんぶらんする連中を、今日も今日とて怒鳴りながら私は思う。
淋しいなんて、思わない。だってこれが自分の日常なのだから。残念ながらまともな小説のネタにするには、少々パンチが効いていなさそうだけれども。
「こらああああ!逃げるなああああ!!」
あったかくもなんともない、ボロアパートは今日も寒い。
でもなんだか、とても――賑やかなのは、事実である。
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