聖夜にて

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一人で街を歩く今、僕はなにを感じるのか。恋人のいないことの寂しさか、友人に予定があることの恨めしさか、クリスマスソングに対する嫌悪か、自分に対する不甲斐なさか。二十歳を超えているにも関わらず、仲睦まじく話している高校生の男女に嫉妬する。 サンタクロースが来なくなって何年経っただろう。きっと僕は良い子ではないのだ。煙草はやめられないし、誰にでも愛想を振舞って心の中では舌を出して笑っている。そんな僕。 許されるなら昔付き合っていた彼女や今好きな彼女に会いたい。そんなことを思いながらいまいち歌詞に意味の無さそうな洋楽を聴いている。 今年はクリスマスムードに街は塗れていない気がする。世間が僕に気を使っているのかもしれない。 サンタクロースがいるならばなにもいらない。ソリに乗せてどこか遠くまで連れて行ってほしい。知ってる人間もいない、言葉もわからないところへ。 鈴の音が聞こえてきた。寂しさゆえの幻聴か。真っ赤に頬を赤らめた君が隣にいてくれたら良いのにと思いながら交差点を曲がる。サンタクロースにしては冴えない、中年のどこにでもいるような酔ったサラリーマンに話しかけられた。「今幸せか?」と聞いてくる。余計なお世話だ。同僚らしき人がその中年を攫っていった。幸せなわけないだろう。お前が話しかけてきた向こうに好きな女と親友が腕を組んで歩いていたのだから。
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