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「今日はゆっくり飲んでってくれ。とは言っても会費制だからな、足りなくなったら自分で払えよ」
「えぇ! そこは『俺が出す』って言うところでしょ!」
「和田、お前の心意気に免じて出させてやるよ」
「ご馳走様です! 和田先輩!」
すかさずみんなから声があがった。
「勘弁っ! 俺は出さないからなっ!」
「みみっちい!」
「俺、みみっちいの。それでいい。柏木さんとは違う」
どうやら三途はアルコールを飲んでもいないのに雰囲気に酔っているようだ。はしゃいで喋り回っているうちに足元がふらっとする。
「あ!」
周りが行くより先に池沢の手ががっしりと三途の腰を支えた。みんなから注がれる酒を片っ端から飲んでいるのに、三途の姿はしっかり把握していたらしい。
「座れ。立ち歩くな」
「……はい」
「……もうさ、突っ込むことも出来ないよ。聞いた? 『はい』だってさ」
「『猛獣使い』って言うんでしょ?」
花に続いたジェイの言葉に振り返った池沢の顔に、みんなの身が竦んだ。
「なんて言った? ジェイ」
「『猛獣使い』。誰か言ってたよー」
途端にぐるっと周りを見渡す。一同静かにグラスを傾けた。
「ジェイ、もう飲むな」
こそっと浜田が言うのを聞いて、池沢の目が浜田に飛んだ。
「いや、あの、ジョークですってば。それをこいつが真に受けて……」
「今日は俺たちのために集まってくれたからな、だから許す。二度と言うなよ」
「分かりました。了解です」
「でも他の人は褒めてたよ、三途さんと結婚するなんて勇気あるって」
「おい! ジェイにそれ以上飲ますな!!」
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