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大滝は帰り、黒いスーツも帰って行く。池沢家も三途川家も親族はとっくに帰った。残ったのは気の置けない連中ばかり。
「課長も行くってさ」
嬉しそうに花が言う。2次会みたいなところで蓮が一緒にいることが実は花は好きだ。最近の蓮は仕事に燃えていて、特に目が離せない。
(絶対課長みたいになる!)
自分がまさか他人を目標にするなんて思っていなかったが、蓮には充分にそうさせる力があった。
――カリスマ性
それが蓮にはある。あの若さで見下すのとは違う、人を従わせる圧倒的な存在感は今の自分には毛ほどもない。
(あの牽引力がほしい)
そして、決断力、実行力。
(俺なんてまだまだ足元にも及ばない……)
タイプが違うのは分かっている。けれどどうしてもそれが欲しかった。
「みんな、今日はありがとう! まさかこうなるとは俺も思ってなかったんだが」
「私も。こんな頑固頭のチーフなんかと結婚するなんてね」
「でもこうなってみればピッタリですよ! チーフの相手には三途さんしかいないって気になるし、三途さんをどうにか出来るとすればチーフか課長……河野さんしかいないし」
澤田の言葉にいくつもの賑やかな声が同意する。
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