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みんな自覚がある。あれこれ二人を揶揄することを言った。もちろん冗談なのに、ここにその境目が分からないヤツがいる。
「それからぁ、チーフの亭主関白とぉ、三途さんの傍若無人ぶりのどっちが勝つか賭けするってー。俺はチーフにしたけど、三途さんが勝ってるんだってー」
そう言ってほぼグラスに満タンだったワインを一気に飲み干す。みんなが念じたのは(早く潰れろっ!)という悲鳴にも似た思い。
「いい加減にしろ。飲み過ぎだ、お前は」
取り上げられそうなグラスを背中に回す。
「かちょー、もっと一杯飲んでるくせにぃ」
こんな時でも『蓮』とは言わなかったジェイを褒めてやりたいが、こうなると手のつけられないジェイに蓮も手を焼く。
「少し外の風に当たって来い。誰か連れてってやれ」
数名が立ち上がる。身に覚えのある連中はこれ以上ジェイに何か言われたくない。そのメンバーを池沢はきっちり覚えた。
(お前らに雑用、言いつけてやる!)
池沢もちょっと大人げないことを心の中で言った。
ジェイの暴露が無ければ盛大な祝いの席になった。少し外に出ていたジェイは、大人しくなって帰って来た。
「ごめんなさい、俺また余計なことしちゃったみたい」
「いいんだよ、お前が悪いわけじゃない」
「そうよ、あんたはいい子。これからもその調子でね」
夫婦二人とも、やはりジェイには甘い。
「でも悪いこと言っちゃったし、しちゃった……澤田さん、俺、賭けるのやめます」
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