19.社員旅行(出発)

13/26
654人が本棚に入れています
本棚に追加
/569ページ
  「達ちゃん、次は私が運転する!」 「いいですよ、俺疲れてません」 「違うの、運転好きなのよ。地図もちゃんと頭に入ってるし、みんなより先に保養所に着けるわよ」  実はこのメンバー。哲平とメールのやり取りをしている。あれこれ心配性の哲平は、自分のアドレスをチームに伝えろと千枝に言った。自分からアドレスをくれと言う訳にはいかない。彼らにとって哲平は未知の人間なのだから。  けれど千枝の『いい人なの!』の連発に、とうとう哲平とアドレス交換をすることになった。実際本当にいい人だと今は思っている。  それが旅行の話になった途端、指令が飛んできた。 『千枝に運転させるな、死にたくなかったら』  千枝は飛ばし屋なのだ。よくハンドルを握ると人が変わると言うが、千枝はその典型的なタイプだ。追い越されるのも、高速でたらたらと走るのも嫌い。 「あの、三途チーフって運転上手で安定してるそうですね」 「そうよ、だって国際ライセンス持ってるもん」 「すげぇ! マジですか?」 「キウッチー、その言葉遣いどうにかならないかな。三途さんはなんとかラリーっていうのに参戦したかったの。悔しいだろうな、もう無理だもの」  あの突風のような人が、ラリー。あまりに似合い過ぎてそばで見たい気がする3人。 「でも、飛ばさないんでしょ? 日本では」 「そうなのよねぇ。三途さんいると運転させてもらえないの。自分で運転するのが好きなのよ」  その意味が分かる3人。 「達夫の次は俺が運転するんです。交代でしようって決めてたから」  完もここは譲れないと思っている。哲平のメールが来た後、3人で道を調べた。とんでもない坂があるのが分かって、千枝にだけは運転されたくない。そこはカーブに慣れている木内が運転することになっている。  ちょっと気分を害したような千枝を見て思うことは1つ。 (まだ死にたくない!)  
/569ページ

最初のコメントを投稿しよう!