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「達ちゃん、次は私が運転する!」
「いいですよ、俺疲れてません」
「違うの、運転好きなのよ。地図もちゃんと頭に入ってるし、みんなより先に保養所に着けるわよ」
実はこのメンバー。哲平とメールのやり取りをしている。あれこれ心配性の哲平は、自分のアドレスをチームに伝えろと千枝に言った。自分からアドレスをくれと言う訳にはいかない。彼らにとって哲平は未知の人間なのだから。
けれど千枝の『いい人なの!』の連発に、とうとう哲平とアドレス交換をすることになった。実際本当にいい人だと今は思っている。
それが旅行の話になった途端、指令が飛んできた。
『千枝に運転させるな、死にたくなかったら』
千枝は飛ばし屋なのだ。よくハンドルを握ると人が変わると言うが、千枝はその典型的なタイプだ。追い越されるのも、高速でたらたらと走るのも嫌い。
「あの、三途チーフって運転上手で安定してるそうですね」
「そうよ、だって国際ライセンス持ってるもん」
「すげぇ! マジですか?」
「キウッチー、その言葉遣いどうにかならないかな。三途さんはなんとかラリーっていうのに参戦したかったの。悔しいだろうな、もう無理だもの」
あの突風のような人が、ラリー。あまりに似合い過ぎてそばで見たい気がする3人。
「でも、飛ばさないんでしょ? 日本では」
「そうなのよねぇ。三途さんいると運転させてもらえないの。自分で運転するのが好きなのよ」
その意味が分かる3人。
「達夫の次は俺が運転するんです。交代でしようって決めてたから」
完もここは譲れないと思っている。哲平のメールが来た後、3人で道を調べた。とんでもない坂があるのが分かって、千枝にだけは運転されたくない。そこはカーブに慣れている木内が運転することになっている。
ちょっと気分を害したような千枝を見て思うことは1つ。
(まだ死にたくない!)
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