33人が本棚に入れています
本棚に追加
風雪が、さらに勢いを増してきた。
すでに膝まで積もった雪に足を取られながら、相川 凌介(あいかわ りょうすけ)は途方に暮れていた。
「こんなことならカフェのマスターの言うことを聞いておけばよかった」
凌介は、この高原へと登る前に立ち寄ったカフェを思い出していた。
『高原とはいえ、山には違いありませんよ。山の天気は変わりやすい。またの機会に、しっかりした準備をしてからお行きなさい』
アマチュアカメラマンの凌介は、冬の高原をぜひ一度カメラに収めて見たかったのだ。
ようやく仕事がひと段落ついて、念願の撮影旅行に繰り出した。
今回を逃したら、いつまとまった休暇が取れるか解らない。
またの機会に、なんて悠長なことは言っていられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!