職業病

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職業病

 カシャン、という音に振り返ると、五歳の娘がツリーの横で突っ立っていた。足元には半分に割れた銀色の玉。ツリーの飾りだ。  半泣きの娘にケガがないことを確認した私は、「大丈夫よ、飾りの一個ぐらい。動いちゃダメよ」と言い聞かせて、掃除機を取りに走る。  半分になってしまった銀色の玉は、ちょっとした行き違いで壊れた、私たちの結婚生活みたいだ。  夫が出て行って――というか、追い出して三ヶ月。最初は「パパはいつ帰ってくるの?」と聞いたり泣いたりしていた娘も、最近は何も言わないし、笑顔も見せるようになった。  床がきれいになると、娘はまたツリーの飾りの位置を修正し始めた。その様子を見ながら、割れた玉をチラシに包み、念のためガムテープで巻く。  ガムテープをしまおうとして、同じ引き出しに入れたソレが目に入った。離婚届――。次に会ったら突き付けてやろうと思っているのに、それを察知したのか、夫は戻ってこない。  私がいない時を狙って、娘とは電話で話しているようだけど。  ムシャクシャした私は乱暴に引き出しを閉めて、娘に声をかける。 「サンタさんへのお手紙も飾った?」     
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