おやすみクリスマス

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 今日は何日?  今は朝? 昼? 夕方? 夜? 空はずっと灰色。  ここは、どこなの? 辺り一面、真っ白。  もう、何もわからなくなってしまった。この前寝たのはいつだったかしら。寝るって、どういう感覚だったっけ。  薬を打っては意識が朦朧として、それを繰り返して、気がつけば手から、いいえ、体全体から、嫌な臭いがとれなくなってた。今じゃもう、その臭いすら、わからない。  誰より敵を倒したと数を誇っていたフレデリックは、何処に行ったんだろう。薬を打たれるのを心底嫌がっていたメアリは、ああ、逃げ出して、処理されたっけ。  戦争を始めたはずの大人たちは、いつしかいなくなっていて、代わりにフリードリヒという少年がわたしたちを指揮してくれているけれど、いったい、どれくらい経って、あとどれくらいで終わるんだろう。 『ユイ、これが終わったら一緒にさ』  この声は、誰の声だっただろう。一緒に、なんだっただろう。  そろそろ、食べ物を食べないと、体が言うことを聞かなくなってきた。薬も打たないと、動けなくなる。  ポケットから携帯食を取り出そうとしたら、足から力が抜けて、気がつけば、白は何処かに消えて、灰色ばかりが、視界に、あれ? 違う、黒い。何かが光ってる。綺麗だ。  もしかして、神様?  答えるように、光が走った。  本当に、神様、なのかしら。神様っているの?  でも、もしも本当に、神様なら、お願いです。  もしも、もしも願いがかなうなら、どうかわたしを――。  機械の駆動音。目の前で止まったそれは、茶色の四足歩行型移動機体。どうしてか、ライトが赤い。こんなのは、初めて見た。 「やあ、メリークリスマス」  乗っていたのは大人の人。赤いふわふわした服を着て、長い白銀の髪が輝いて眩しい。 「めりー、くりすます?」 「今日だけの特別な挨拶さ」 「今日だけの? どうして今日だけそんなことを言うの?」 「……そんなことどうでもいいじゃないか。それより、私はサンタクロースなんだぜ」 「さんた――」 「ああいい、いい、知らないんだよな。クリスマスを知らないんだもんな」  わたしの話を遮って、機体から降りると、私の頭の近くにしゃがみこんで、覗きこんできた。
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