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あぶく病
「こりゃあ……またエグい死体ですね」
僕が見た写真には、頭部がない血みどろの死体が映っていた。
アスファルトの上に転がっている頭の欠けた死体は男性のもののようで、シャツにべっとりと赤黒い血がペンキをぶちまけたみたいに付いている。
頭部のあるべき部分は血の池が出来ており、首の断面はまるでアサガオが花開いたように、パックリと肉を開いて、グジュグジュの煮崩れしたチャーシューみたいになっている。
「これ、死因はなんなんです?」
「頭部の破裂だ」
「破裂? 頭が吹っ飛んだってことですか? 脳みそに爆弾でも仕込まれて?」
「その例えは、『まさにその通り』って言わざるを得ない」
僕の問いに、相手の刑事は頷いた。若い刑事だが、真面目そうな公務員さまである。
対して僕は、ただの小説家だ。いつもネタを探して取材を申し込み、未知のものを探求してはそれを物語に変換する。
今回は、迷宮入りになった事件を取材していて、過去の未解決事件の資料を見せてもらっている。
そんなものを、小説のネタにしたいからと言って取材に応じて見せてくれるはずはないが、世の中は金とコネクションでできている。
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