指瘡

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手のひらの中央に魚の目のような固い突起が出来た。 左の手でつついてみると、およそ皮膚とは思えない程の硬質な感触があった。 痛みはない。 暫く様子を見てみるかと思っていたが、数日で右手を使うのに支障が出るほどその瘤は成長した。 2cmの大きさになったそれは、横長に楕円の形をしていた。 指に近い側はつるりと滑らかで、下の方は少しぶよぶよとしていた。 丁度人の指の先のようだった。 やはりつついてみても痛みはないが、このままでは車のハンドルを握ることもままならない。 私は皮膚科に出向くことにした。 皮膚科の予約を取り付けた日のことだった。 玄関の扉を開けて外に出ようとしたところで、右手に異変が生じた。 手のひらが何やらむずむずとうずくのだ。 右手に目を向けると、瘤がぶるぶると動いている。 じっと手をみつめている内に、瘤はぼこりと音を立てて1cm成長した。 その姿はやはり指に酷似していた。 うっすらと関節の皺すら出来ている。 何故か苛立った私は、それを左手でつまみ思い切り引っ張った。 右腕の中心から何かが抜き取られたような感覚がして、同時に瘤は引っ張られるがままに千切れた。 手のひらを見ると、少し引き攣れたような跡が残っただけで瘤はなくなっていた。 引きちぎった瘤は、ゴミ箱に捨てた。
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