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「お姉さんってどんな人なの?」
三奈ちゃんがにんじんをつつきながら聞く。
「十九歳で、高卒で働いてるんだって。普通の事務って言ってたけど。
それから、料理が上手で、学くんのお弁当は毎日お姉さんが作ってくれるって。
あとは、うーん、毎週日曜日の午前中に二人でスーパーに買い出しに行ってて……、よくテレビのドラマ見てるらしい」
「ふうん。偉いんだね。お姉さんも学くんも。支えあって生きてるって感じ」
始実がカツサンドの最後の一口を飲み込むと、口を拭きながら言った。
「うん。よくお姉さんの話するね。仲いいみたいだしそれに……」
「それに?」
二人が顔を覗き込んでくる。
「お姉ちゃん可愛いって」
「へえー! それ、弟が言うの? 」
始実が再び仰け反って驚いた。
私も、ちょっと驚いている。
海苔で変な顔が描かれたデコ弁の写真を私に送ってきて、
『今日の弁当。全くカワイイ姉だよなw』とコメントがそえられているなど、
端々に『カワイイ』というフレーズは出てくる。
「まあでも、姉弟ふたりっきりだから、距離が近いのかもね」
「うん……」
三奈ちゃんの大人なコメントに、なんともすっきりしない気持ちで返事をした。
実のところ、最近はお姉さん可愛い発言が出ると、ちょっともやっとしたものが胸の中をよぎるようになってしまった。
あまりにもお姉さんを語るときの学くんの様子がキラキラしていて、面白くない。
学くんは、お姉さんや学校の友達に私の話をすることはあるだろうか。
そのとき、こんなふうにキラキラしてくれているだろうか。
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