24人が本棚に入れています
本棚に追加
私服の学くんを見るのも、今日が初めてだった。
お店ではいつも長袖の制服のジャンパーを着ていたし、バイトの前後は学校の制服だった。
今日はとてもいい。
水色の半袖のシャツから、白い長い腕が伸びている。
学くんの清潔そうな感じを際立たせている。長袖に隠れていた彼の腕は細そうだと思っていたけれど、ちゃんとそれなりにたくましくて男の人の腕だと思う。
「そのシャツいいね。私服、初めて見た」
「これ?姉ちゃんが買ってくれたやつ」
また、お姉さんだ。そんなに嬉しそうに言わないで欲しい。
ふと、左腕の肘の上あたりに白い傷跡を見つけた。
「それ、どうしたの?傷?」
「ああ、これね。小さい頃のやけどのあとだよ。だいぶ薄くなったんだけど、まだ消えきらないの」
「そうなんだ。なんでやけどしたの、そんなとこ? 」
「なんだっけな……。おぼえてないや」
そう言って学くんは、私を見てクスッと笑った。
しっかりしてそうな学くんも、案外小さい頃はいたずらっ子かおっちょこちょいだったのかもしれない。
「夜雨ちゃんの私服も初めて見た。なんか新鮮だね」
この日のために考え抜いたコーディネートだ。
本当は私にも可愛いと言って欲しかったけど、学くんに褒められたと受け取って満足することにする。
最初のコメントを投稿しよう!