清潔な洋菓子

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やがて二人でシフトに入った日は、一緒に帰るようにもなった。 「今まで高校生は俺ひとりだったからさ、同年代がバイト先にいると嬉しいよね」  たかが同年代というくくりで受け入れられただけなのに、もうこの一言が嬉しくてたまらない。  初めてに近い高揚感だった。 「好きになっちゃった」  学くんと別れたバイト帰りの夜九時半、誰にも聞こえない小さい声で呟く。  ことばにした途端、いくつも胸の中で花が開いていくのがわかる。 大きな色とりどりの花が咲く森の中で、今までのあこがれだけの恋とはちがう、手の届きそうな希望を感じていた。
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