フェチに佇む。

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男のひとの 上唇の真ん中がちょっと 尖ってるのが好き 体つきは華奢なのに 意外にゴツゴツした手の甲が好き 白いシャツをちょっと捲って パソコンを打つ仕草が好き わたしは妄想OLです 会社では仕事一筋 一応役職にもついてます はい、お局様なんて言われております ですが 会社を一歩出ればただの女です 最近の悩みは10こ下の部下のこと やたらなついてきて困ります そう 前述のフェチを総て網羅した フェチ記念人物です はっきり言って 見とれます 帰宅後は彼との同棲やらdateやらを 独り暮らしのマンションで 妄想しております なんてぜーったいにばれたくはございませんから ついつい 厳しく指導してしまう日々 そんなある残業の夜 彼が居眠りしとるでないかい いくら二人きりとはいえ 寝るとはいい度胸をしておるわい わたしはそうっと彼に近寄り 考えます はてどうやって起こすべか? しかしなんて綺麗なお顔 社内の女子が蜂のように群れ集まるのも わかる気がする だけど疲れて眠る顔 今朝から外回り 帰って来ても積み上がる書類の山 先輩社員にもいろいろ 頼まれてあっぷあっぷの筈なのに 文句も言わずに こなしている君 揉まれ揉まれて あと二三年もすればちょっと漂えるよ だからもう少しだけ 寝かせてあげようかと 彼の下からそうっとやりかけの 資料を引き抜いた ……半時後、飛び起きた彼は 終わった業務といないわたしに 気がついて 慌てて会社を飛び出して まだ近くを歩いてたわたしを 呼び止めた 『課長!ご、ごめんなさい……』 『いいよ。おつかれさまでした、じゃ』 『待って!』 立ち去ろうとするわたしの腕をさっと 掴んで彼は告げるのです 『夕食まだですよね?僕、奢ります』 『いいよ、大丈夫』 『お礼したいから。課長とか部下とか関係無く、一人の男として誘ってます』 『へ?』 思わず変な声が出て 君は涙袋を弛ませてニコッと微笑む ああなんて素敵な妄想なんだろうか… 君はそっとわたしの手を取る 『この近くにいい店、見つけたんです。課長をずっと誘ってみたくて。行きましょう?』 触れあった感覚が熱を持つ だから これは、いつもの妄想じゃない 現実に起きているはずのこと 気がついたわたしはたぶん今 世界一惚けた顔、してます
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