後輩君が眼鏡をしてきた。

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いつもオシャレなスーツに チャラそうな笑みを浮かべた後輩君が 初めて眼鏡をかけてきた 給湯室で三時の休憩 大好物のプチドーナツを食べてたら小さな穴に君が見えた 眼鏡が似合ってて チャラさが程よく抜けている 『いいの食べてる』 『よ、良かったら食べる?』 いつもの近い距離感にいつものように戸惑いながら答えたら君は嬉しそう パクリと一口で食べてモグモグする顔がリスみたいで可愛いかも… 『今日は親切ですね、僕に』 君は私を見つめてくる。 『いつもは仕事の話しかしてくれないのに』 『…仕事場だからね』 君は可笑しそうに目を細めた うーん この慣れてる感が鼻につくというか 苦手なのだよ だから 今日の眼鏡の君はちょっとだけ 私好みになってるよ、なんて 死んでもいうものか 『こうゆう狭いとこにいると、変な気分になりますね』 『変…?』 横を見たら後輩君の顔が近くなってる 『このまま先輩にキスしたらどうなるんだろうとか。僕のこと、どんな風に思ってるのかとか』 顔がさらに近くなる 私は慌ててドーナツを彼の口に入れてブロックした 『さっ、そろそろ戻らないと』 噎せている君の横をすり抜けようとしたら背中から抱きしめられた 『ね、似合ってるって言ってよ、眼鏡』 『……に、似合ってるね?』 『こういうの好みなんでしょ?』 好みって…?! 『眼鏡かけてて見た目学者みたいなインテリ男子、先輩のどストライクなんでしょ?』 会社でそれを話したのは同期のしほだけのはず。 『今の僕なら、先輩にキスしても許される?』 『そ、そういう問題じゃないからっ』 手を伸ばしたのに君は給湯室の内鍵をかけてしまう 『先輩のこと、独り占めさせて』 『…離して。誰か来たらどうするの?』 『いないふりする』 『こどもみたいなこと言わないで』 『先輩、大好き』 君は私を振り向かせてキスをした 驚くほどに慣れていない感じに 舌がもつれる 『…ね?俺、先輩が思うほどチャラくないでしょ?』 『……』 『だからチャラさが苦手なんて言わないでよ』 しほったら 昨日のランチで話した君の印象を本人に言うなんて、どうかしてる 『先輩、一生のお願い!僕の彼女になって?』 一生のお願いって、こどもみたい。 反則でしょ、後輩君。 君はどこまで私好みになるつもり? 大人なのに こどもみたいな一面を見せる人が 好きなんてこと まだ誰にも言っていないのに
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