第二章・家族の輪郭
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第二章・家族の輪郭

 創世した冥界でゼロスの戴冠を迎える。  とうとうその日がやってきました。  ハウスト、私、イスラ、ゼロスの四人は冥界という新しい世界に赴くことになります。  本来、私たちの移動には多くの護衛、士官、女官、侍女が付き従います。しかし今回は同行しません。  行き先は創世期の冥界で、そこは未知の世界。現在、そこへ立ち入ることを許されているのは各界の研究者や学者のみ。許可された者だけなのです。  私はコレットや女官たちに見送られる。 「ブレイラ様、くれぐれも無茶なさらないようお気を付けください」 「分かっています。心配性ですね」 「魔界に戻られたら直ぐに式典準備に戻っていただきますね」 「……それも分かっています」  少し目を逸らしてしまいましたが、もちろんそれも分かっています。大事なことです。  しかも冥界へ赴いている間は四大公爵夫人やコレットに式典準備を任せているので、少し申し訳なさも覚えます。 「では行ってきますね」  繋いでいるイスラの手を引き、「あなたもご挨拶なさい」と促す。 「いってくる!」 「いってらっしゃいませ」  こうして私たちが挨拶をしている横で、ハウストがフェリクトールに留守中のことについて話しています。 「戴冠を終えたら直ぐに戻る。その間、魔界を頼んだぞ。分かっていると思うが」 「分かっている。精霊界だろう」 「ああ。精霊王からも何らかの報せがあるだろう」  ふと耳に入ってきた会話。  その内容は気になるものでしたが、話を終えたハウストが振り返る。 「ブレイラ、行くぞ」 「はい」  手を差し出され、それに手を重ねる。  私を見つめる彼の面差しはいつもと同じ穏やかなものでしたが、さっきのフェリクトールとの会話には少しの不穏さを感じます。 「精霊界で何かあったのですか?」 「ああ。精霊界の囚人が脱獄したようだ」 「それは大変じゃないですか」 「まあな。だが魔界には直接関係ない。精霊族で解決するだろう」  ハウストはなんともないことのように答えると、見送りの皆を見回す。