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私はその日、天使を見た。
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「臣(おみ)ー、飯食いに行くぞ」
「あ、うん」
昼休みを報せる鐘が鳴り響くと、校内は一気に騒がしくなる。
板書を取り終えたノートと教科書をロッカーに仕舞い、鍵をかけた所で幼馴染の琳(りん)が鞄を二つ持って近づいてくる。
一つを受け取って、一緒に教室を出た。
「腹減ったー! 今日の弁当はなんだろうな!」
「さぁな」
口を大きく開けて、豪快に欠伸を浮かべる琳に、呆れた視線を送る。
「琳、今日寝すぎじゃね? 毎時間怒られてただろ」
「仕方ねーだろ。あのハゲ達の授業が詰まらねーんだから」
「成績落ちるぞー」
「誰に言ってんだよ」
「うぜぇー」
いつも昼休みに使っている空き教室の前に着いて、そのドアを開けた。
既に中で座っていた二人が、私達を振り返る。
「お、きたきた」
「おつかれ、二人とも」
雄大(ゆうだい)と、類(るい)。この二人も、私の幼馴染。
「あれ、竜海(たつみ)は?」
いつもはあともう一人いるんだけど、その姿が見えない。まだ来てねーのかな、と思いながら、1番窓際の席に腰を下ろすと、「あー、」と雄大が歯切れ悪く言った。
「あいつは女と食べるって」
「……そっか」
竜海の女癖の悪さは、今に始まったことじゃない。
軽く頷いて、類からおしぼりとプラスチックのカップを受け取った。ついでに水筒も受け取って、各々のカップに麦茶を注いでいく。
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