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五時間目の終わりから保健室で寝ていた私は、放課後のチャイムが鳴り響くのを聴きながら、のそのそと潜っていたベッドから下りる。
ベッドに腰をかけて上履きにつま先を突っ込んだままスマホを弄っていると、閉まっていた保健室のドアが開いた。
「やっほー、五十嵐くん」
「先生と呼べ」
「やだよーん」
ちゃらんぽらんな声に、あれ、スマホから顔を上げて振り返ると、馬鹿みたいに明るいミルクティーブラウンのチャラ男が、「あ、臣ー」ふにゃりとだらしのない笑顔を浮かべて手を挙げた。
「調子はどう?」
「まあまあ」
「そっか」
笑いながら歩いてきたチャラ男、竜海は、片手に持っていた私のリュックを「はい、臣」と私に渡す。
「さんきゅ」
「じゃ、帰ろっか」
「おう」
失礼しました、と保健室を出て、竜海と並んで昇降口まで歩く。
「琳達は?」
「琳ちゃんは日直。雄大は部活で類は生徒会」
「ああ、だから竜海が来たんだ」
放課後の廊下には、吹奏楽部の楽器の音や、運動部のホイッスルの音が響いて混じり合う。
「なんかごめんな、竜海」
「なにが?」
「本当は、女と遊ぶ約束してたんじゃねーの?」
見上げると、一瞬きょとんとした竜海は、すぐさま柔らかい笑みを浮かべた。
そして、ぐしゃりと私の頭を撫でる。
「そんなの、臣が気にする必要ないよ」
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