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色の白いは七難隠す、だなんて言葉を編み出したのは誰なのだろう。その人は、色白で得をしていたの? それとも色黒で白い肌が羨ましかったのだろうか。 まぁ、確かにそれは、その、色白が得をするっていう考え方は、私も否定はしない。ある意味で正解だと思うから。つまり「ある年齢の女性までは」という限定付きならってこと。 私の家族は、別に取り立てて色白な家系じゃないけれど、私は色白に産まれてきた。それも突然変異のように特別な白さで産まれた私は、幼い頃、熱を出して病院に連れて行かれるたびに、母は、よく叱られていたのだという。 「お母さん、この子を外で遊ばせていませんね?」 ちょっと笑えないくらい真剣な顔でお医者さんに怒られちゃったと話す母のことは、本当に可哀想って思う。 でも、私だって好きで色白に産まれたわけじゃないから、責められたって困るんだけどね。 私の肌は、冬だけじゃなくって、夏も、お餅のように白かった。もち肌とはよく言ったものだわ。 けれど、幼い頃の私は、自分が色白であることを、大して喜んでなどはいなかった。 母に迷惑を掛けていた他にも、たとえば小学校のプールの授業で、私の背中は毎年、真っ赤に腫れ上がった。そして、その痛みで何度も眠れぬ夜を過ごしていた。 あの痛さは今でも忘れられない。どんなに冷やしてもダメで、日にちが過ぎて赤みが徐々に引いていくのを待つことしかできなかった。本当に辛いのなんのって。 だから私は、普通の人よりも弱い立場にあるのだと、そう思えた。みんなと同じように過ごすことができないのだと。 そのせいで、元々は、外遊びが大好きな子供だったはずなのに、いつの間にか部屋の中で本を読んでばかりいるようになった。 たかが、日焼けくらいでインドア派になったとは思えないけれど、子供ってちょっと物事をオーバーに捉えがちなところもあるし。あながち、間違ってはいない気がする。 でも、だからって私は、自分のことを選ばれし特別な人間だと感じていたわけじゃないわ。大人になって社会で揉まれたら、「普通であることの凄さ」が身にしみて分かるのだけれど、もちろん当時の私は「特別になりたい」と全力で願っていた。
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