第三章 悠然な鳥

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 それを入っていいと解釈したエリスは、渡された手紙をポケットに仕舞い門の先へと進む。龍も中へと入るが門番はもう睨みつけてくることはなかった。門番はたとえ使い魔が黒かろうと大きかろうと、気にはならないようだ。彼らはただ、召集された者かそうでないかの判断をしているだけのようだ。  開かれたままの扉をくぐり、ざわつく城内へと入ると、1人の男性が近づいてくる。案内人と名乗る彼は、エリスと黒麒にだけ話しかけると歩き出した。彼ははじめて見る龍に興味を示すこともない。姿を見たことがあるか、話には聞いているのだろう。不吉な存在である白美と龍はいない存在として扱っているようだ。  階段を上っていく姿を見て、龍は歩幅の関係で数段飛ばしながらゆっくりと上る。『黒龍』の姿では階段が小さく上りにくいが、体をぶつけることなく上ることができるほど広い。廊下も広く、翼を広げなければぶつかることはない。2人の人間と擦れ違うこともできるほどだ。 「こちらの部屋です」  男性が立ち止まった部屋は玉座の間だった。龍には読むことができなかったが、プレートに書かれている文字を見てエリスは驚いていた。もしかすると、普段はこの部屋に案内することはないのかもしれない。だから、エリスは驚いたのだろうと龍は思ったようだ。  エリスの様子を気にすることなく男性は扉を開く。大きな扉は見た目よりも軽いのか、難無く開いた。入室を促し、全員が室内へ入ったことを確認すると静かに扉を閉めた。  中へ入ると数十人の人が集まっていた。エリスは『黒龍』は体が大きいため邪魔にならないようにと考え、黒麒達をつれて壁側へと向かった。入ってきた龍を見て驚く者、何かを隣の人と話す者など様々だ。龍を見たことのある者もない者も関係ない。龍を見た途端、騒がしくなる室内。だが、突然静かになった。  それは、スカジと共にベネチアンマスクをつけた男性が部屋へと入って来たからだ。姿を見ると跪く者が多く、何もしないのはエリス達だけ。玉座に男性が座るのを確認すると、横に立っていたスカジが睨みつけてきたがエリスは気にしていない。エリスは逆に睨みつけるかのような目つきでスカジを見ていた。
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