第四章 情報屋と情報

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第四章 情報屋と情報

 音がするのではないかと思うほど勢いよく、龍は目を開いた。だが視界は薄暗い。そして、少々息苦しい。不思議に思いながら龍は両手を柔らかい何かについて体を起こす。そこは見知らぬ部屋だった。部屋には誰もおらず、ベッドに寝かされていたと気がついた龍はゆっくりとベッドに座り両足を床につけた。部屋はカーテンが閉めてあるため、薄暗い。意識を失っている間に連れてこられたのはわかるのだが、ここがどこなのか龍は知らなかった。  龍は斜め後ろに向かって伸びる長い二本の角と、背中の翼で仰向けにして寝かせることができずに俯せで寝かされていたのだろう。だから、息苦しかったのだ。こちらに来て一度も人型で眠ったことはなかったのだが、俯せで眠るのは少々苦しいようだ。寝ている時は気にならなかったが、起きてから息苦しいことに龍は気がついたのだ。今後も人型で寝ることになるのかもしれないが、角が伸びている方向と翼で横になることも仰向けになることもできない。だからといって、座っては眠りたくないだろう。それならば、消すことができるのかはわからないが角と翼を消すことができるようになるしかない。消すことができれば、仰向けでも横向きでも寝ることができるようになるだろう。そうすれば、息苦しい思いも座って眠るようなこともしなくてすむ。  小さく息を吐いた龍は、ベットに座ったまま部屋を見渡す。部屋には座っているダブルベッドの他に机と椅子、何も入っていない本棚が一つあった。同じベッドがあと二つほど入るだろう少し広い部屋。ここにいても今は何もすることがない。それに、ここがどこなのかも確かめる必要がある。  そう思うと龍は、ベッドの脇に置かれているスリッパを履いた。龍のロングブーツや服はどこにも見当たらない。靴を履きたいと思ってもここにはないのだから、置かれているスリッパを履いて移動しても構わないだろう。今着ているのも誰のかわからない甚兵衛羽織だ。しかし、サイズが丁度よく翼が出る部分もあり、窮屈さが全くない。わざわざ作ったのか、それとも誰かが持っていた物なのか。そうだとすれば、翼を出すために切ったということになるだろう。誰の物かはわからないが、魔物用の甚兵衛羽織ではないというのは着ている龍にはわかっていたようだ。ベッドに手をついてゆっくりと立ち上がる。
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