第三章 悠然な鳥

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第三章 悠然な鳥

 白美に戦闘を学び、黒麒に人型となる訓練をしてもらっている間に、2日がすぎた。その2日は龍にとってあっという間だった。訓練の多くは白美にしてもらい、黒麒に人型になる訓練をしてもらうことが減った。  人型になるにはもう教えることもなく、姿を保つのは自分自身の意志でできるからと黒麒は答えたのだ。だが、1時間ほどは訓練をしてくれている。そのお陰かはわからないが、人型を保っていられる時間は長くなっていた。  しかし、白美の訓練で何か攻撃方法ができたわけでもない。ただ攻撃を避けるしかできない。しかも、素早く動けるわけではないので攻撃の全てが避けれるわけでもないのだ。空を飛ぼうと翼を羽ばたかせても飛ぶことは不可能だった。  体は大きく、重い。それに対して翼は小さいのだ。飛ぶことのできない翼では、羽ばたかせて砂を巻き上げて目くらましをする程度だ。ただ羽ばたきの強さによっては、攻撃を跳ね返すことも威力を弱めることもできる。それ以外の活用方法は今のところ見つけられていない。 「龍、今日は『黒龍』の姿で行きましょう」 「え……」  今日のためにも少しでも人型を長く保つことができるように訓練していたというのに、何故かエリスは人型ではなく獣型で行こうと言ったのだ。どうしてそんなことを言うのかと、龍は驚きに目を見開いた。  何か考えがあっての言葉だろうが、龍にとっては残念だった。人型を保てるようになるのは、悪いことではない。人型を保つことは、今後も必要になってくることだろうとは思っていたからだ。だが、どうして突然そんなことを言い出したのかは龍にはわからなかった。龍は口に出さずに何故と目で問いかけた。 「今から行くヴェルリオ城にはヴェルリオ王国から集められた人達が来るの。龍のことを知らない人のほうが多いし、裏切り者もいるかもしれない。人型で行って突然『黒龍』になったら騒ぎになるわ」 「『黒龍』のままで行くことには納得いかないし、気になる言葉もあったけど……人型から突然『黒龍』になって、不吉だって騒がれるより先に騒ぎを起こしておくってことか?」
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