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12月、綿のような粉雪が私達の街にも降り積もり、薄く化粧をし始めた。
世間でも、クリスマス、という五文字がチラつくようになり、それは当然私達家族にも当たり前に訪れる。
そして、来年小学4年生になる弟にとってはいつにも増して特別な物になる。
私達家族はあまり裕福とは言えない家庭で、うちにゲーム機、なんてものは置いていなかった。私は別にそういうものに興味はなかったのだけれど、弟はいつも友達の家から帰る度に、「いいな」と小さな悪態をついて誰にいうでもなく泣いていた。
だから私はお父さんとお母さんと相談して今年は私もアルバイトをして、弟が欲しがっているゲーム機を買ってあげる事にした。
それを弟に話すと、目を輝かせて喜んでいた。そんな弟に母はサンタさんにプレゼントを頼まない代わりに、と言う約束で。と一言つけくわえて。
それからの弟は、厭に家事を手伝ったり、ショッピングモールに置かれたゲームソフトの雑誌なんかをよく持ち帰ってはよくよく眺めていた。
12月15日、私のバイト代も入り例のゲーム機を買いに行ったのだけれど、クリスマス時期だからか、どのお店にもそれは置いていなかった。
3人で頭を悩ませていたけれど、私はインターネットでそれを無事に見つけることが出来た。ゲームのソフトと一緒に。
弟はすごく喜んだ。私達たちもふっと肩の荷が下りた気がした。
12月24の朝、弟がまだ朝ごはんも出来ていない台所に来た。
「おはよう」と、鳥の様に元気な様子で。
そんな弟の姿に子供だなぁ、と思いつつも、素直で可愛いとも思った。
キラキラした目からは、楽しみなのが伝わってくる。
学校の友達にも、すでに言っているらしく、明日にはうちに数人の友達を呼ぶ予定になっている。そんな弟を見ていると、高校生活最後の大盤振る舞いにも綺麗な花がさくような気がして嬉しい。
けれど、雪よりも白い弟の目にいくら雪が降り積もっても私の家のチャイムは鳴らなかった。
外もすっかり暗くなって、クリスマスが始まってもまだ、荷物が届く様子は無かった。
そして午後7時、私達家族は事前に予約していたレストランに向かう事になってしまった。
それは弟のクリスマスとは別に、来年から大学の寮に行く私への家族からのクリスマスプレゼントだった。
次第に、弟の目から、溶けた雪が溢れ出した。
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