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レストランまでは片道1時間もかかる。それはつまり、弟のプレゼントは受け取れないということだった。
私はレストランに行かなくてもいいよと言ったけれど、キャンセル料もかかるし、私の高校最後のプレゼントだからと、父は車を走らせた。
弟は、子供らしくいじけてしまった。
いくら母が明日もらえるからと言っても、友達が朝からくるからと泣いた。
母のせいで僕も嘘つきになると、車内では弟のすすり泣く声だけが静かに響いていた。
けれどこればかりは誰も悪くない、きっとクリスマスで配達の人も忙しい。レストランも、私の為で別に弟を蔑ろにしているわけでもない。でも、そんな事はまだ弟にはわからない。
レストランでも、弟はあまり食べなかった。
そんな気まずいクリスマスプレゼントを私達は過ごし、きっと不在通知のある家に戻って言った。
家に着いたのは、22時頃、弟はドタドタと自分の部屋に篭ってしまった。
玄関に戻り、母が言った。
「不在通知が入ってない」と。
私は母と携帯を見たが注文はちゃんとされていた。
塞ぎ込む弟に、せめて明日はプレゼントがちゃんと届くのだろうかと困惑していると、玄関のチャイムが鳴った。
「こんな時間に誰だ」と父は言うものの、ソファーから動こうとはしなかった。
怖いから出て、と言う母の為に私はドアを開けた。
そこには弟のクリスマスプレゼントを持った男の人が居た。
「え」と混乱していると、母も私の所に来てその人に目を丸くした。彼は当たり前の様に言ってくれた。
「この荷物、包がクリスマスプレゼントだったのできっと今日渡したほうが良いと思いまして、夜分遅くにすみません」と。
彼は1度この家に来てから今日の荷物を配達し終えたあとまた戻って来て、私達が帰ってくるのを車でずっと待っててくれたらしかった。
私の荷物ではないけれど、「ありがとうございます」と深々と頭を下げる母の横で、私は思わず泣いてしまった。
彼のお陰で弟も、私達にとってもとっても良いクリスマスになった。
リビングでゲームを始めた弟の後ろで、「私将来子供出来たらあぁいう人に育てたいな」と言った。
「子供は、そうしたいと思って素直にそう育つほど甘くないよ」と幼い笑顔で母は笑って居た。
そんなクリスマス。
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