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「しかも、そいつが捕まったきっかけは市内で起こった殺人事件だった。……もし、昔の時点で警察が真犯人であるそいつを捕まえてくれていたら人がもう一人死ぬこともなかったし、何より父さんが無念のまま終わることは無かったのに……そう思うと、警察には入る気にはなれなかった。その代わりに、弁護士になる道を選んだ。父さんのような人をもう増やさせないためにも」
そこまで話してから慎の顔を見ると、予想通り、慎は大号泣していた。
「泣かないでよ、慎……」
慎はそう言う僕の手をガッ!と掴むと、
「和也!やっぱり俺も弁護士になる!!」
と言った。
「……は?何だって?」
予想外の言葉に、僕は思わず聞き返した。
「だから、俺も弁護士になる!で、弁護士になって、和也や和也の家族みたいに悲しむ人を一人たりとも出さねぇようにしてやる!これが俺の今からの夢だ!!」
僕は慎は何を言ってるんだろうと一瞬ぽかんとしてしまったけれど、すぐに慎の言葉の意味が分かって、少しだけ泣きそうになってしまった。
僕はそれを隠すためにニコッと笑った。
「……慎が弁護士になれると思う?」
「なれる!俺を何だと思ってやがる!」
「ただの熱血単直バカ?」
「うぉい!」
僕がそれにクスクスと笑うと、慎は嬉しそうにニカッと笑って
「やっと心の底から笑ったな」
と言った。
……どうやら、慎に作り笑いは通用しないらしい。
この日を境に、僕たちの友情は更に深まったのだった。
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