榊和也のとある1日

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 僕が成長して大人になった今も、こうして家の事は大抵姉がやってくれている。  というか、僕がやろうとしても 「お姉ちゃんがやりたくてやってるから和也は何もやらなくていいの!和也は自分の事に専念してて!」と台所や洗濯機などの前から引き剥がされてしまうのだけど。  それでも、最近はまだ姉が仕事に行ってる間に何か家事をやっておいても「何でやったの!」と言われなくなった分、まだマシだ。  家事が一切出来ない男には、なりたくなかったから。 「今日も行ってくるの?」  僕がそんなことを思っていると、不意に姉がそう聞いてきた。 「うん。日課だからね」 「そっか。和也は頑張りやさんだもんね。でも気を付けてね?寒いし、暗いから」 「分かった」  僕には毎朝の日課がある。  それは──。 「じゃあ、ランニング行ってきます」 「はーい、車と不審者と痴漢と犬と猫とカラスに気を付けてね!」 「何でカラス?」 「和也のあまりのかわいさに襲ってくるといけないから」 「それは流石に無いと思う…」  よくわからない事を言い出した姉を置いて、僕は家を出た。
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