あの子との出会い

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それまではとても暑かったのに、その日は突然寒くなった。季節が変わる頃だ、新しい寝床を探さないといけない。でも、精悍な猫のそばを離れたくはなかった。それに、これから寒くなるのにあの女の子はこの公園に来るのだろうか。どうしてあの女の子がこんなに気になるんだろう。女の子を気にして留まるうちに雨が降り出しボクはあっという間に凍えてしまった。 きちんと自分で生きていくためには、寝床とごはんを常に確保しろ、そう精悍な猫は教えてくれたのに。自分の愚かさを呪った。 でも、その後ボクは女の子に見つけてもらって、家に連れて行ってもらった。あったかいごはんと寝床をもらった。のちにそのごはんでお腹を壊したけれど。暴れ回ったけど女の子は全然気づいてくれなくて、公園に行ってなんとか他のごはんを自分で確保しながら休んでなおした。 (そうだ、精悍な猫を埋めてくれたお礼をしないとね) 女の子はいつもお腹を空かせているようなのでごはんを持って行ったのだが、なぜかすごくびっくりしていて、その後こっそり埋めようとしていた。 (なんで埋めるの?ごはんだよ。) 「ごめんね、私はねずみを食べないんだよ」 そうか、ねずみは好みではなかったらしい。それは申し訳ないことをしてしまった。 (じゃあ、どうやっておんをかえしたらいいんだろう) 女の子はしょっちゅうおとうさん、という人に怒鳴られていた。どこも傷はついていなかったけれど、でも、その後はいつも怖い目になってしまう。(おこってるの?怖いの?)ボクが呼びかけると、女の子ははっとした顔になって、それから笑顔を向けてくれる。そのたびに、ごめんね、ありがとうと言われた。そのたびになんだか嬉しい気持ちになる。(よくわからないけど、ボクがいれば女の子は喜ぶんだ)それがとても嬉しい。うんと、だからこれは、恩返しができることが、嬉しい…のかもしれない。(ボクは、おんをかえせるのが嬉しい。楽しい!)きっとそうだと思った。だって女の子といると今までとは違う、すごくあったかくなる。
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