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天使の記録:贈り主
12月24日クリスマスイブ
朝から雪が降り始めた。今までの貯金と今月にほとんどごはんを食べずに貯めたお金。1ヶ月間ギリギリまで我慢して1日は一食か二食にし、少しずつ節約したお金。それでもケーキやごはんを買ったらほとんどなくなってしまった。
ケーキを買ってくれば、お父さんは喜んでくれるかもしれない、笑顔を見せてくれるかもしれない。たった一切れのケーキを父親と食べたい、女の子はそんな願いを抱いて帰った。それから、もうひとつの袋に目を落とし少女はふふっと笑った。
あのこにも、クリスマスに豪華なごはんを食べさせてあげなくちゃ。玄関に入り、父を探す、たいていはどこかに寝そべったりお酒を飲んでいるが、今日はいない、お酒を飲んでいないのかもしれない。それなら少しは話を聞いてくれる。ケーキを一緒に食べてくれるかも…
女の子は期待して父親を探した、庭に人影が見える。父親は縁側に座り込んであたりを眺めていた。父親が部屋から出ることは今までほとんどない、少女は不安そうにまわりを見渡した。
嫌な予感がした。
「お父さん…ーはどこ?」ゆっくりと父が振り返る。まるでたった今女の子に気づいたとでも言うように。
「ああ?猫ならうるせえから追い払った。蹴っ飛ばしたらどっか行ったよ」
オイハラッタ―ドコカニイッタ―
どういうこと…?その瞬間、女の子は目の前が真っ暗になった。全ての思考が吹き飛んだ。冷静に受け止める「自分」なんてどこに行ったのだろう。受け入れることもどうするかも考えることはできず、ただ呆然とした。
-足がべったりとしている、生クリームがついていた。ケーキを落としていたらしい、「おい…酒…って…いよ」
父親の声が途切れ途切れにしか聞こえなくなっていた。それは、普段のように心を沈めて聞こえなくするのとは本質的には違う。今までのは自衛のようなもの。それも、盾で守っているのではなく、ただ傷を耐えていただけだった。それは違うものだった。女の子は家を飛び出した。
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