あのことの出会い

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-気がつくとうちに連れてきていた 道ばたで倒れていた猫、病院へ連れて行くのもわからず、とにかく家に連れてきて毛布にくるみ、牛乳を与える。後にあまりいい方法でないことを知るが、その頃の私にはそれが限界だった、猫を助ける方法、アイロンをかけられたハンカチ、同級生が当たり前にもらえるそれらを私はもらったことがなく、だから与え方もわからなかった。けれどその猫はずいぶん丈夫だったらしく、数日後には立ち上がり、庭を走り回っていた。 しばらくして庭を出て行き、なんとなく、寂しいながらも帰って行ったのだな、と感じて安心した。帰る場所があるのは良いこだ。   けれどあのこは戻ってきた。最初はねずみをもってきたのでおどろいた。あのこなりのお礼だったのだろうか、その後もよくうちの庭に来て、私は猫をどうかまえばいいのかわからなかったけど、あのこはただあしもとで眠ったり庭で歩き回るだけで、それでも私はとても楽しくなった。父親から怒鳴られ、庭で縮こまっていてもあのこがいると暖かく、安心する。 私は自分の家が客観的に見てどんな状況にあるか、わかっているつもりだった。受け入れているつもりもあった。けれど、あのこと過ごし、自分がどれだけ与えられていないのか、少し理解できた気がする。本当の家族というものはどれだけ幸せなんだろう。 私はあのこから生まれて初めて愛情というものを感じていた。
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