見知らぬ世界

2/4
前へ
/44ページ
次へ
自分には覚えのない、若い子の服であったが、とりあえずこの知らない部屋を出たかった美恵子は、他に着替えるものもなく、"誰のか知らないけれど、ごめんなさい"と思いながら着替えた。 着替え終わると、若い子の服を着た自分に抵抗を感じた。 "こんなおばーさんが、こんなハデな服を着て大丈夫かしら?" 見た目は若くなったが、中身はそのままであったため、見た目と気持ちが追い付かないのだ。 そう思う美恵子の目の端に、姿見が見えた。 そっと姿見の前に立ち、自分の姿を見た。 そこには、初々しい自分がいた。 その瞬間、気持ちが高揚した。 忘れかけていた色々な感情がワッと押し寄せるようであった。 "これが夢でもかまわない。とにかく今を楽しもう" 何かが吹っ切れたのか、先程まであった様々な不安が飛んでいったようだ。 美恵子は、机にあったオニギリをパクパクっと食べると、玄関にあった、これまた誰のだか分からないパンプスを履いて、外に飛び出した。 外は暖かく、肌で感じるのは春の風であった。 美恵子は、机にあったカギで玄関の鍵をかけ、アパートらしき建物から出た。 外に出て、周りを見渡すも、やはり知らない景色であった。 どうしたものかと思っていると、ふいに誰かに声をかけられた。 「美、恵、子! おはよう!!」 声の方を見ると、これまた知らない同い年ぐらいの女性がいた。 美恵子が「えーっと」と考えていると。     
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加