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自分には覚えのない、若い子の服であったが、とりあえずこの知らない部屋を出たかった美恵子は、他に着替えるものもなく、"誰のか知らないけれど、ごめんなさい"と思いながら着替えた。
着替え終わると、若い子の服を着た自分に抵抗を感じた。
"こんなおばーさんが、こんなハデな服を着て大丈夫かしら?"
見た目は若くなったが、中身はそのままであったため、見た目と気持ちが追い付かないのだ。
そう思う美恵子の目の端に、姿見が見えた。
そっと姿見の前に立ち、自分の姿を見た。
そこには、初々しい自分がいた。
その瞬間、気持ちが高揚した。
忘れかけていた色々な感情がワッと押し寄せるようであった。
"これが夢でもかまわない。とにかく今を楽しもう"
何かが吹っ切れたのか、先程まであった様々な不安が飛んでいったようだ。
美恵子は、机にあったオニギリをパクパクっと食べると、玄関にあった、これまた誰のだか分からないパンプスを履いて、外に飛び出した。
外は暖かく、肌で感じるのは春の風であった。
美恵子は、机にあったカギで玄関の鍵をかけ、アパートらしき建物から出た。
外に出て、周りを見渡すも、やはり知らない景色であった。
どうしたものかと思っていると、ふいに誰かに声をかけられた。
「美、恵、子!
おはよう!!」
声の方を見ると、これまた知らない同い年ぐらいの女性がいた。
美恵子が「えーっと」と考えていると。
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