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美恵子は紀香が泣き止むまで、背中を優しく叩いてあげた。
少しすると、紀香は落ち着き、「ありがとう。」と言うと、ティッシュで鼻をかんだ。
化粧は崩れて、顔はぐしゃぐしゃになっていたが、その時見せた笑顔は本当に美しく見えた。
紀香は、「もう、化粧が大変。ちょっとお色直ししなきゃ。」と言って、近くにあった公園のベンチに座った。
美恵子がその化粧直しを見ていると、
「てか、美恵子。あんた今日化粧しないで、家出てきたの?
まぁー確かにあんたはスッピンでも十分綺麗だけど、化粧は女のたしなみでしょ?
軽くはやっておきなさいよ。」
と言い、自分の化粧が終わると、美恵子のも勝手にやりだした。
「よし、こんなもんかな。
私が教えてあげたやり方、あんたもそろそろ覚えなさいよね。
あんたは、なんでもベタベタ塗りすぎだから、このぐらいナチュラルな方が似合ってるっていつも言ってあげてるでしょ?」
美恵子は紀香に鏡を借りて、見てみると、そこには自分でも驚く姿があった。
年をとってから化粧もほとんどしなくなり、それも主人が亡くなってからは余計にすることはなくなった。
若い頃の顔に、若い子の化粧。
年甲斐もなく、まだまだ自分もイケるなと思ってしまった。
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