大学生活へ

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私は美恵子の将来を聞いてるんだけど。」 紀香はまた頬を膨らます。 美恵子はそんな紀香の頬をつねり、「秘密。」とだけ言い、笑って誤魔化した。 それから、紀香について行くと大学に着いた。 大学は、あの部屋から歩いて十五分ほどの所にあり、校門には大きく「下村大学」と書いてあった。 やはり聞いたことの無い大学名で、未だにここがどかだか分からなった。 「もうお昼だし、学食でも行かない?」 紀香に誘われるまま私は頷き、食堂に向かった。 美恵子自身、大学には行っておらず、高校卒業と同時に近くの工場で事務の仕事についていた。 だからなのか、大学の広さには目がくらみ、まるで迷路を歩かされているようであった。 食堂に着くと、大勢の学生で賑わっており、席一つ見つけるのにも苦労したが、何とか二人分のスペースを見つけ食券を買いに行く。 しかし、いざ買おうとした時、自分が何も持っていなかったことに美恵子は気付いた。 〝そういえば私、気づいたらこの世界にいたからお金なんて持ってないよ、どうしよう〝 そう思い紀香が食券を買う後ろでオロオロしていると、自分の背中をトンと押す感覚を感じた。 そこには、朝美恵子を起こした拓哉と名乗った男性が立っていた。 「なんだ、来てたのかよ。」     
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