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ボケるのはもう少し後にしてちょうだいね。
じゃー、私は帰るけど、昨日言った一緒に住むって話、考えておいてよね。」
娘はそう言って部屋から出ていった。
美恵子はまだシワシワな自分の手を見ていた。
しかし、いくら見ていてもシワがとれるわけでも、あの五百円玉のぬくもりもそこに戻ってくることはなかった。
しばらくしてから、美恵子はいつものように、ベット脇に置いてある杖を手に取ると、部屋にある椅子に深くこしかけた。
そして、部屋の中をボーっと見渡す。
"やっぱりあれは夢だったのね。
それはそうよね。急にあんなに若返るはずがないし、周りは知らない人に、知らない世界だったもの。
でも、夢でも、少しの時間でも、若かりし頃を体験できてよかったわ"
そう思う美恵子の目に、昨日ベットの枕元に置いた、青色の本が入ってきた。
杖をつきながら、またゆっくりとベットに歩みより本をを持つと、また椅子に腰かける。
そして、ペラペラと本をめくった。
そこには変わらず白紙のページがあった。
「お父さん、あの夢は私にサプライズプレゼントですか?
ビックリしすぎて、私、心臓止まってしまいそうでしたよ。
もしかして、それを狙ってやったんじゃないですよね?
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