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外は昨日よりは少し暖かく、道の日向で寝ていた猫もゴロゴロと気持ち良さそうにしている。
美恵子も杖をつきながら太陽の日差しを受け歩いた。
近くのバス停からバスに乗り、景色の流れを目で追う。
幾つかのバス停が過ぎ、ある場所で美恵子はバスを降りた。
降りた後は、またゆっくりと杖をつきながら歩く。
少し歩くと緩やかな川が流れる散歩道が現れた。
散歩道には犬の散歩をする人、ジョギングをする人、ベンチに座って絵を書く人と、色んな人がいる。
美恵子がその中を歩いてくと、まだ誰も座っていないベンチを見つけ、そこに座った。
鳥のさえずりを聞きながらしばしの休憩。
夢の中では、この程度で疲れたりはしなかったことを思い出すと、美恵子は改めて歳を感じた。
呼吸が整うと、カバンに入れた青色の本を出し、表紙に描かれた青年を指でなぜる。
「お父さん、今日はお父さんとよく散歩した場所に来ましたよ。」
そう言うと、一瞬青年がこちらに笑いかけたように見えた。
美恵子はそれに応えるように、顔のシワをさらにクシャっとさせて笑う。
それから本を手にしたまま、一時間程その場でゆっくりと過ごした。
暖かいとはいえ、少し体が冷えてきた美恵子は、本をカバンにしまい、その場を後にしようとした。
その時、不意に美恵子の隣に人が立つ。
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