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それは、昨日道で美恵子が倒れそうなのを支えてくれた青年だった。
「お休みの所すみません。お隣よろしいですか?」
美恵子は驚いたが、コクリと頷き「どうぞ。」と言った。
青年は美恵子の隣に腰掛けると、
「昨日は大丈夫でしたか?
あの後も少し心配してたんですよ。」
と言ってきた。
美恵子は青年が覚えていることに少し驚き、
「はー、お陰様で。」
と、気の抜けた返事をしてしまった。
青年は「よかった。」と言うと、美恵子が手に持つ青色の本に目をやった。
「へー、その表紙に描かれている人、なんだか僕に似てますね。」
その青年が言うように、美恵子が昨日急に本を押し入れから出した切っ掛けは、その青年が表紙の青年に似ていることを思い出したことからだった。
「そうね。あなたに似ているわ。」
美恵子はそう言うと表紙を見つめた。
見つめながら、隣に座る青年との出会いによって、美恵子はふと昨日出会った拓哉と言う青年を思い出した。
"そう言えば、表紙の青年も夢に出てきたあの拓哉と言う子に似ていたわね。"
美恵子にとって拓哉との出会いはあまりにも突然で、そのことに今まで気づかなかった。
「すみませんが、その本少し見せてもらえませんか?」
隣に座る青年が美恵子に頼んできた。
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