二人の拓哉

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美恵子が紀香に聞くと、 「二号棟の三階、204号室。 全く、拓哉くんが言ってた通りだわ。 美恵子、ちょくちょく部屋を忘れるから、一応部屋の場所も私に教えてくれたの。 あんたね、拓哉くんに甘えすぎてると、いつかは痛い目見るわよ。」 と、またまた呆れた顔をされた。 美恵子は「気をつけるね。」と紀香に告げると、教えてもらった部屋に向かった。 大学内は広かったが、大きく数字の二が書かれている建物が、食堂を出てすぐ目の前にあった。 建物に入り、三階を目指す。 階段を登りきると、すぐに204号室の部屋があった。 部屋の扉を開けると、百人ほど入れる部屋には大勢の学生が既に席に座っていた。 教授らしき人も、壇上に立っており、すぐにでも講義が始まりそうである。 美恵子は急いで拓哉の姿を探した。 すると、一番奥の、一番後ろの席でスマホをいじっている拓哉を見つけた。 その拓哉に向け歩みを進めるが、この一歩一歩がこれからの人生を左右すると思うと、緊張が走る。 拓哉が座る席まであと数歩の所で、拓弥は美恵子に気づきチラッと見てきた。 美恵子は拓哉と目が合い、ドキッとしたが、思いの外あっさりと拓哉はスマホに再び目を戻した。     
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