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年と共に、何かに夢中になり、その夢に向かって走るなんて感覚は、忘れているだけなのか、それとも人生でそんな時がなかったのか分からないが、二人の姿を見て美恵子には少し羨ましくなった。
「夢か、私にもまだみれるかな。」
目の前を緩やかに流れる川のように、穏やかな気持ちで呟いた。
「さーな、でも俺はお前のおかげで夢を追いかける決意が出来た。
皆俺が夢を語ると、お前には無理だなんて言われてきたけど、恵美子、お前だけは俺の夢をずっと応援してくれた。
けど、俺自身どっかで夢をあきらめた方が楽になれるのかって思ってた。
そんな俺が、昨日電話で卒業後はどっかの会社に就職して、サラリーマンでもやるわって言ったら、すぐに家に来て怒っただろ。
あなたの夢ってそんなものだったの?本当にあきられめきれるの?って。
そんな怒ってくれたお前を見てさ、俺カッコ悪いなって思った。
そしたらさ、なんか吹っ切れて、どうせ同じカッコ悪いんなら、夢おっかけて何度も失敗してそれでもあきらめない、人が見たら無様かもしれないけど、そんな人生を歩んでやるって、そう思えた。」
昨日今日と、夢の中での拓哉はとてもクールに見えていたが、夢を語る今の拓哉は少年そのものだった。
「俺さ、卒業したらすぐにでもフランスに行くつもりなんだ。
向こうには俺の年で既に一流パティシエって呼ばれてる奴もいるらしい。
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